2019年7月12日金曜日

扉をもう一度

届いたばかりのアフリカ最新号

























「アフリカにチベットのこと書いてええのん?」

ほろ酔いで言った、くだらない冗談から始まったのだ。



インド、ネパールのチベットエリアをひとりで周って帰ってきたばかり、人に伝えたい、と、強く思うことがあった私の前に、赤い表紙が目を惹くその雑誌が現れた。

詳しいやりとりはお酒のせいか時間のせいか記憶になくて、でも、書きたい、と申し出ることの気恥ずかしさを、冗談でごまかしたことは覚えている。



2009年のことだ。



言葉どおり、次の号に1ページに収まる短いエッセイを書かせてもらい、そこからの数年で、長い連載も完成させた。



その後、書くことを辞めるつもりも、アフリカから離れるつもりもないまま、筆が止まってまた数年。


そろそろ、と、ブログで助走をつけてみていたところに、

たぶん、私の一生で最も悲しいであろう出来事が、最後のひと押しをしてくれた。




今、目の前にある、変わらず切り絵が美しい表紙は、

始まったばかりの、私の新しい時間の扉のよう。




子供の頃から、書くことは私の大切な一部なのに、どういうわけか、離れたり戻ったりしていたけれど、


でも、やはり書き続けなければ、と、確信している。




読まれるか、読まれないか、

誰が読むのか、

そんなことはどうでもよくて。



書いている間、私は全ての悲しみや痛みから離れることが出来る。


それこそ、私が生きることの中に、書くことが含まれているという証拠なのだと思う。




「アフリカ」2019年7月号、

「月と車椅子」という短編に、母への想いを込めました。

他の作品も、それぞれの人生を映して興味深いものです。

読んでみようと思ってくださる方、お知らせください。

一冊500円で配布しています。


郵送も、送料込みでお受けします。








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