届いたばかりのアフリカ最新号 |
「アフリカにチベットのこと書いてええのん?」
ほろ酔いで言った、くだらない冗談から始まったのだ。
インド、ネパールのチベットエリアをひとりで周って帰ってきたばかり、人に伝えたい、と、強く思うことがあった私の前に、赤い表紙が目を惹くその雑誌が現れた。
詳しいやりとりはお酒のせいか時間のせいか記憶になくて、でも、書きたい、と申し出ることの気恥ずかしさを、冗談でごまかしたことは覚えている。
2009年のことだ。
言葉どおり、次の号に1ページに収まる短いエッセイを書かせてもらい、そこからの数年で、長い連載も完成させた。
その後、書くことを辞めるつもりも、アフリカから離れるつもりもないまま、筆が止まってまた数年。
そろそろ、と、ブログで助走をつけてみていたところに、
たぶん、私の一生で最も悲しいであろう出来事が、最後のひと押しをしてくれた。
今、目の前にある、変わらず切り絵が美しい表紙は、
始まったばかりの、私の新しい時間の扉のよう。
子供の頃から、書くことは私の大切な一部なのに、どういうわけか、離れたり戻ったりしていたけれど、
でも、やはり書き続けなければ、と、確信している。
読まれるか、読まれないか、
誰が読むのか、
そんなことはどうでもよくて。
書いている間、私は全ての悲しみや痛みから離れることが出来る。
それこそ、私が生きることの中に、書くことが含まれているという証拠なのだと思う。
「アフリカ」2019年7月号、
「月と車椅子」という短編に、母への想いを込めました。
他の作品も、それぞれの人生を映して興味深いものです。
読んでみようと思ってくださる方、お知らせください。
一冊500円で配布しています。
郵送も、送料込みでお受けします。
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